杉渕実践のキーワード 



  杉渕実践のキーワードは、次の3つだという方がいる。
  なるほどと思える切り口である。

・スピード
・バリエーション
・イメージ
  
 スピード

  著書やメルマガをいくら読み込んでも感じ取れないことがある。
  実際に見たり、聞いたりすることでその実践の凄さは明確になってくる。
  それが時間とお金をかけて現場へいく価値である。
  その得た価値を文章化してみることで、自分自身への消化を促す
  
  6月5日日曜日。「教育の鉄人」杉渕鐵良先生(板橋区新河岸小学校)
  の学校を訪問し、その実践を直接参観することができた。
  三つのキーワードにまとめる形で書き込んでみたい。
  
  杉渕実践キーワードは、まずこれだろう。
  スピード
  
  朝の全校活動から子どもたちがもどって席に着き
  その後、杉渕先生が教室に入り正面に立った直後だった。
  気合の入った「おはようございます!」一発(まさに)。
  そして間をおかずにすぐに始まった10マス計算。
  後から思えば、これがすべてを物語っていた。
  
  計算や音読といった学習上の活動だけではない。
  すばやく席から立つ、すばやく準備をする、すばやく次の行動にうつる、それが時間短縮につながり、量を保障する。
  そしてその量は質へと変化する。
  無駄のない動き自体が集中を促し、子どもの頭脳や身体を鍛えていく。
  そういった考えが具現化されていると感じた。
  とかくありがちな「ていねいな指導」や「わかりやすい指導」に見られるスピード感の欠如、テンポの悪さ…これらを私たちはふり返ってみる必要がある。
  
  三時間目の体育終了後、スピード第一の男子はもうすでに廊下から運動着を脱いで上半身裸で教室に入ってきて着替え始めたのには笑ってしまったが…。(子どもたちも笑っていたが)
  
  とにかく半端でないスピードの要求に、教師の決意を感じた。
  
  
  
   ◆よく、「速すぎる」といわれます。
    そうでしょうか。
    私から見れば、まだまだ遅いです。
  
    スピード…
    どのスピードでしょうか。
    ・活動そのもの
    ・切り替え
    ・その他
  
    実践を、「スピード」という観点で見てみませんか。
  
    
  
   

  バリエーション

  二つ目のキーワードは、
  バリエーションである。
  
  二時間目の空き時間に、教室で参観者と質疑応答したときに
  杉渕先生はこんなことを言った。
  
  「バリエーションがないと、教師があきる」
  
  これはなんとも含蓄のある言葉だと思った。
  「子どもがあきる」のではなく「教師があきる」
  これは、教師の内部情報の重要性を見事に指摘している。
  
  一つの台詞を言わせるのにも、教師が10通りの表現方法を持っているのと100通り持っているのとでは、明らかに違いが出てくる。
  そして、それは単に数多くのパターンを体験させるというだけでなく子どもの活動一つ一つを評価することにもつながっていくのではないか。
  教師が内部に多くのバリエーションを持っていることで
  多様な多面的な評価が可能だし、活動の発展に結びつく。
  活動の広がり、深まりは結局のところそこに規定されるのではないか。
  
  「あきる」「あきない」教師の姿はレベルに直結する。
  
  杉渕学級の学習活動の種類は、算数を見ても体育を見てももちろん国語も
  普通の学級と比較すれば、圧倒的に差があるだろう。
  これは、ユニット学習という方法にもよるのだろうが
  そのユニットのパーツ一つ一つに多くのバリエーションが含まれている。
  どこまでも細分化して活動させる。
  わずかな変化を見逃さずに、次の課題を要求する。
  
  バリエーションは、教師の追求性そのものだ。
  
  
   ◆杉渕実践の特徴ですね。
   バリエーションは。
  


  イメージ

  スピードにのって、バリエーションのある活動をこなすのが
  杉渕実践の大づかみなとらえだ。
  しかし、絶対に見逃せないキーワードがある。
  イメージである。
  
  朝の全校活動で、各学年が思い思いに練習しているとき
  6年生だけがトーンの違う声を出し始めた。
  発声練習も当然あろうが、この声はイメージを重視する姿勢が
  なければ絶対生まれないと思った。
  
  授業では、たとえば国語の音読場面。
  ただはっきりと、ただ速く、ということではなく
  「どういう景色か、気持ちか」そうした助言が、さりげなく入
  れられる。
  言葉を大切にするために「間」を使うことも多い。
  たとえば、算数の分数の説明。
  「通分は、人間関係にたとえる。」
  そういう生活と結びつけていくことを大切にしている。
  
  「イメージ豊かな」などと簡単に口にはするが
  それは数値化できないものだ。
  しかし測ることはできなくても、推量るくらいならできるだろう。
  子どもの表情や動き、出てくる言葉や声調、そうしたまるごとの活動を通して多少なりともキャリアを積んだ教員なら子どもの持つイメージの豊かさを感じることができると思う。
  
  わずか三時間ほどの参観ではあるが
  杉渕学級の子どもたちのイメージする力は鍛えられていると推量った。
  国語の短歌の読解で、指名なし発表を聞いていると
  自分たちでイメージを広げよう、深めようとしていることがよくわかった。
  「なぜこの句を作ったのか、は明日話し合いましょう」
  と杉渕先生が打ち切られたとき、明日その時間を見ることができ
  ないことを本当に残念だと思った。
  
  スピードとバリエーションを型の指導ととらえてみると
  イメージは、その型に「熱」を与えるように思う。
  熱があるからこそ、実践は高みを目指して加速していく。
  「子どもがあきる」のではなく「教師があきる」
  これは、教師の内部情報の重要性を見事に指摘している。
  
  
   ★イメージづくりって、とっても大切だと思っています。
   杉渕流の国語は、想像力を育てます。
  

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