見えない何か 


 
   見えない何か
   
    1年生を受け持ったときのことです。
    A子さんという子がいました。
    花が大好きな子でした。
    A子さんが育てる花は、元氣になるのです。
    こんなに違うの!というくらい差が出ます。
   「A子さんが育てる花は、元氣になるね!」
   といいました。
   「そんなことあるはずがない」
   「その花がいいんだ」
   
    論より証拠。
   
    他の子がその花を育てることになりました。
    A子さんは、一番育っていない、今にも枯れそうな花を
   育てることになりました。
   
    不思議なことに、枯れかかっていた花が元氣になったの
   です。
    逆に、元氣だった花が枯れてしまいました。
   
    同じように水をやっているにもかかわらず…
    
    子どもたちは、言葉を失いました。
    元氣だった花が枯れてしまい 
    枯れそうだった花が 生き生き
    否定のしようがありません。
    「まいりました」という感じでした。
   
   「どうして、A子ちゃんが育てると元氣になるの」
   「教えて」
    子どもたちが聴きました。
   
    A子ちゃんが前に出ます。
    ゆっくり語りはじめます。
   

   
   「どうして、A子ちゃんが育てると元氣になるの」
   「教えて」
    子どもたちが聴きました。
   
    A子ちゃんが前に出ます。
    ゆっくり語りはじめます。
   「私…お花に話しかけてるの。『今日も元氣』とか、『さ
    くのを楽しみにしているわ』とか」
   「話しかけてるの?」
   「花は言葉がわからないよ」
   「そうだよ」
   「ううん、私、わかると思うの」
   「…」
   
    その日から、子どもたちは声をかけ始めました。
    
    すぐに行動しはじめました。
    花に声をかけます。
    他のものにもかけています。
    
    教室の花、花壇の花が、いきいきしてきました。
    枯れそうになっていた花も、息を吹き返しました。
   
    しかし、中にはまだ納得しない子がいました(笑)
    いたずら好きの男の子たちです(私を含む)。
   「先生、ぼくたち、まだ信じられない」
   というのです。
   
    そこで実験することにしました。
   
    花を育てる実験です。
    環境に差をつけて、種をまきました。
    一方は、肥料を入れた花壇の土。
    もう一方は、グランドのはしにあるやせた土です。
    
    やせた土の担当は、もちろんA子ちゃんにお願いしまし
   た。
    肥えた花壇のほうは、毎日水をやるだけです。声はかけ
   ません。
   
    圧倒的な条件の差。
    いくら声をかけても…
    
    さあ、どうなるでしょうか。
   
   

   思いの力 言葉の力
  
   
   花を育てる実験です。
   環境に差をつけて、種をまきました。
   一方は、肥料を入れた花壇の土。
   もう一方は、グランドのはしにあるやせた土です。
   
   やせた土の担当は、もちろんA子ちゃんにお願いしました。
   肥えた花壇のほうは、毎日水をやるだけです。声はかけま
  せん。
  
   圧倒的な条件の差。
   いくら声をかけても…
   
   さあ、どうなるでしょうか。
  
   はじめは、肥えた土のほうがぐんぐん伸びました。
   やっぱりいくら声をかけても、土が悪ければ…
   みんなが思い始めた頃です。
   
   なんと、やせた土の植物がぐんぐん伸び出したのです。
   肥料など入っていない、グランドの土です。
   それが、育っているのです。
   常識では考えられません。
   
   毎朝、A子ちゃんが、水をやりながら話しかけたのです。
   奇跡が起こりました。
   2か月たつと、逆転しました。
   何でやせた土で育つんだ…
   説明がつきません。
   A子ちゃんの思いと言葉が栄養になっているとしか考えら
  れません。
   脱帽です。
   
   このときから、私は思いの力、言葉の力を実感しました。
   そうか…栄養というのは…
   
   思い 思い 思い…
   言葉、言葉、言葉…
   
   言葉に思いをのせて
   思いを言葉にのせて
    
   植物でさえそうです。
   まして人間だったら…
   パワーをもらって生きている
   人間というのは、食べ物と水、空氣だけでは生きてていけ
  ないのです。
   思いという栄養がなければ。
   先人は、それを愛といいました。
   

      

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