見たこと作文






  たんぽぽの秘密  4年生


 子どもたちに、見たこと作文を書かせています。見たこと、考えたことを書く作文です。
「ふつうの作文とどう違うの?」
子どもたちはいいました。
 そうですね。どこが違うのでしょうか。
 ふつうの作文は、思い出して書きます。
「えーっと、あのときどうだったかな?」
 よく覚えていないとアウトです。記憶力の勝負(?)になりやすいのです。
 これに対して見たこと作文は、現在進行形の作文です。たとえば、実況中継のようなものです。
 見たことを書くのです。「えーっと、どうだったかな?」よくわからなかったら、また、見に行けばいいのです。または、ノートをそこに持っていき、見ながら書いてもいいのです。

とじたりひらいたりする時間はかんけいないのか。

 予想
 ぼくは、とじたりひらいたりする時間はかんけいないと思います。
 理由
  どうしてかというと、ぼくは、朝にとじているたんぽぽを見たからです。
 夜は、あまり外に出ていないからわからないけど、朝とじているのは本当に見ました。
  だから、ぼくは、とじる時間なんてかんけいないと思います。
                                      (しょーた)


 ☆朝とじているたんぽぽを見つけました。大発見をしました。
  朝は開いているはずなのに、どうして閉じているのでしょう.



  たんぽぽ

 ぼくは、今日学校に行くと中たんぽぽを見つけました。
 ぼくは、サッカーを習っていて、そしてサッカーは朝早くに行かなくてはならないので、6時40分ごろに家を出ました。
 そしたらたんぽぽは開きかけていました。
 そして12時ころ学校から帰ると、たんぽぽは開いていました。
 そして8時ころ夜外に出て見てみたら、たんぽぽは、とじていました。
 だから、朝でも早い時間だったらまだ開いていないんだなぁーと思いました。                                      (ひろくん)
 

 ☆しょーたくんの作文と関係あります。ひろくんは、「朝でも早い時間だとたんぽぽは閉じている」ことを見つけました。
 朝、昼、夜と1日3回も見ているのがいいですね。



  昼はとじているたんぽぽについて

 ぼくも、先生や千慧さんや望さんのとってきたたんぽぽを見ました。
 あれはやっぱりわたげになるじゅんびをしていると思います。
 ちょうとかといっしょで、さなぎみたいに変身してると思います。
 だから、たぶん昼とじるたんぽぽはないと思います。   
                                 (いっぺー)

 ☆例をあげています。すばらしい。その例が、またまたすばらしいですね。

 
  たんぽぽのくきについて

 たんぽぽのくきは、下のほうが赤っぽくなっていて上のほうはみどりになっています。
 あとくきは、長いのと短いのがあります。
 くきの長いのは大きいのだったから、短いのは小さいのだと思います。
                                      (あーきー)  

 ☆くきの色、くきの長さに目を向けました。目のつけどころがいいですね。
  くきの色では、上のほうと下のほうでは色が違うことを発見しました。
  くきの長さでは、どうして長さが違うのか 予想しています。

  たんぽぽについて
 
 たんぽぽは、ねっこのところだけむらさき色で、上のほうのところは黄色です。
 たぶん、それは、土の中にいるからだと思います。
 あと、ぼくの考えでは、日がその部分にあたらないから、そこだけむらさきになっていると思います。                       (けんちゃん)
 

 ☆根っこを調べてみるとおもしろいですよ。色の違いに目を向けましたね。  自分の考えを書いているのもいいですね。

 たんぽぽ日記 見たこと作文へん

  わたげのまき

 私も、望さんや千慧さん、それから先生が見たたんぽぽを見ました。
 よく見ると、
 ・くきが赤と緑になっていた。
 ・わた毛を葉(ぎざぎざのじゃなく)がかこんでいた。
 ・わた毛をかこんでいる葉の間はくっついているみたいだった。
 ・わた毛をかこんでいる葉の下のちっちゃな葉は、うしろにいっているんじゃなくてくるんとなっていた。
  ・わた毛は一本ずつ分かれている。
 ・わた毛を一本とってみると?また毛が何本かに分かれていた(五本くらい)
 ・くきのところが緑色になっていた。
                                          (ちい)

 ☆わた毛の研究をしました。これも、調べるとおもしろいでしょうね。
  よく見ています。

 
 見たこと作文を書く子がふえてきました。
 けっこうよく見ています。
 おもしろいです。

 これから、茎、葉、根っこについての作文もふえていくでしょう。

「先生、たんぽぽについて書きたいんだけど、どこにもないよ」
「あるよ。おらといっしょにいこう」
 子どもたちどうしで交流が始まっています。
 調べれば調べるほどおもしろくなります。
 新たな発見があります。
 いろいろなことがわかってきます。

 ここで問題です。


 たんぽぽは、食べられるか。

 早速、こーじくんが調べてきました。
 

   たんぽぽは食べられるのか?

  予想
 ぼくはたんぽぽは食べられると思います。
 花と葉っぱが食べられると思います。
 食べ方はゆでて食べると思います。
  くきをおると、牛乳のような白いしるがでてきます。
 だから、くきは食べられるかは、わかりません。

  おばあちゃんに聞いたこと

 昔はよく食べたそうです。春の初めのころの、柔らかい葉っぱをごまあえや、おひたしにして食べたそうです。
 少しにがみがあって薬にもなったそうです。葉っぱからも白いしるがでます。
                                        (こーじ)

 ☆すぐに予想して調べたのがすばらしいですね。
  さすが、おばあさん。よく知っていますね。ご協力ありがとうございま した。

 こーじくんは、次の日も作文を書いてきました。

  たんぽぽは食べられる

 本で調べたら、根も食べられると書いてありました。

 食べ方
 あくをぬいて、あぶらでいためてあじつけをすると根っこのきんぴらができる。
 根は長くてふかくまでのびている。
 くきは中がからになっている。
 くきの切り口に十文字に切れ目を入れると外がわにくるくるとまき上がる。   それはくきの内がわのかべが外がわよりつよくできているから。
                                        (こーじ)
 

 ☆根っこも食べられることがわかりました。
  私が知っているのは、たんぽぽの根っこからつくった○○○○です。飲み物です。さあ、なんでしょうか。
  きんぴらにして食べるとは知りませんでした。
 
 こーじくんのようにすぐに調べる、 続けて調べるって大切ですね。


  雨の日はどうしているか

 子どもたちは、様々か角度から見たこと作文を書いてきます。
 同じ問題意識を持っている子もいます。
 今回のテーマは、「雨の日のたんぽぽ」です。

 「夜になるとたんぽぽは閉じる」これは、子どもたちの調査で明らかになりました。
 結論は「閉じる」です。
「夜といっても、夕方から閉じると思う」
るいくんの発言で、授業が盛り上がりました。
 そうです。ただ「夜」といってしまうと、それで終わってしまいます。わかったつもりで終わってしまいます。
 ちょっと考えると、夜がいくつかに分けられることがわかります。
 たとえば、夕方、宵の口、夜中、真夜中など。
 るいくんの切れがある発言によって、子どもたちは、一歩つっこんで考えることができました。
 今回はどうでしょうか。

 ある子が、「たんぽぽは、雨の日は閉じている」といいました。
「私もそう思います」
「私がこの前見たら閉じていました」(体験に基づく意見)
「教科書に『雨の日は閉じる』と書いてあるから閉じると思います」(権威に基づく意見)
「えーっ、わかんないよー」(正直なところ)
「見たことがないからわかりません」(これまた、正直なところ)

 追究するのにもタイプがあります。
   1 書斎派
   2 フィールドワーク派

 書斎派は、まず教科書、参考書、図鑑などを調べます。知識優先のタイプです。
 フィールドワーク派は、まずは見に行きます。「百聞は一見にしかず」を地でいく体験重視タイプです。

 書斎派派、答えを早く知ろうとします。フィールドワーク派派、早く確かめようとします。
 子どもは2つの面を持っています。どちらか1つということはありません。

「教科書に書いてあるよ」
という言葉で、多くの子が動きました。
「ちょっと待ってよ、本当にそうなの。確かめもしないで信じていいんですか」
 
 こんな経過で、調べ始めたのです。
 6月5日の作文を見てみましょう。
 たんぽぽ

 雨の日はどうしているか?

 予想  とじている。

 実さいに見に行って

 とじていた。
 でも、少し開いているものあった
 なぜでしょう? (中略)
 たんぽぽって、雨の日は、とじているのね。はーづの予想は、みごとあたり。 でも、少しあいていたのと、とじていたのがあったのはなぜ?
 以外と、たんぽぽは、調べるといろんなことが学べるのね!
 すごーい。
 今度の勉強はなにかなー?                  (はーづ)



  花、わた毛どちらのくきが長い

 たんぽぽのくきの長さを問題にしました。
 サークルで、たんぽぽのくきを張りつけたものを持ってきた人がいました。中嶋先生は、クラスの子どもたちの作文とともに実物を持ってきたのです。
 びっくりしました。
 なんと、1m45pもあったのです。
「えーっ、こんなに長いくき見たことない!」
 参加者全員驚きました。
 国分寺のほうで見つけた(中嶋先生のクラスの子が見つけた)そうです。
 私が住んでいた、板橋では、最高で1mでした。

 子どもたちに話すと、みんなびっくりしました。
「先生、うそじゃないの?」
「オーバーにいっているんじゃないの?」
と疑う子。
「調べてみる!」
という子。
 反応はさまざまでした。
 
 次の日から、家庭学習ノートに「くきについて」の作文が登場しました。
 実物を張りつけてくる子もいました。
 証拠があるのですから、これは確かです。
「けっこう長いね」
 25〜30p級(なんか魚みたいですが)のたんぽぽが多く、50p以上のものはありませんでした。
 ところが、たんぽぽ探検隊はついに50p以上の大物を発見したのです。

  たんぽぽのくきの長さ

 今日帰り道で、明博くんとおいでくきのすごく長いたんぽぽを見つけました。  なんとその長さは、52pでした。
 こんな長いたんぽぽのくきははじめてでした。         (たーか)

 ☆ついに見つけました。伝説の大物たんぽぽを! ちょっとオーバーですね。 でも、50pを越えるたんぽぽのくきは初めてです。
 よく見つけました。

  たんぽぽについて

 今日、学校の帰りにたんぽぽを見つけました。
 そして、53pぐらいのを見ました。
 そして、そのたんぽぽは花か、わた毛のどちらかというと、それは花 でした。
 ほとんどの人は、わた毛なのに、ちーえのは花なんだろうと思いました。
 たぶん、みんなのは、花になりかけていると思います。       (ちーえ)

 ☆最後のところが、ちょっとわかりませんね。でも、ちーえさんが見つけたのも50pをこえています。
 ちーえさんは、重要な問題を提起しています。

 それは、「 ほとんどの人は、わた毛なのに、千慧のは花なんだろう」というところです。
 こういう疑問を持つことが大切なのです(自ら学ぶ力の第一歩です)。


  たんぽぽのくきの長いのは種になっているか花になっているか

 今日、学校から帰るとき、たんぽぽのくきの長いのがありました。
 それは、種になっていました。
 だから、ぼくはくきの長いのは、種になっているのだと思います。
                                (あーきー)

 ☆なんといっても題がいいですね。
  あーきーくんが見たくきの長いたんぽぽは、種になっていたそうです。
  ここが問題です。「種になっている」とは、どういう意味でしょうか。
  考えてみてください。


 しょーたくんも、このところ毎日たんぽぽについて書いてきます(あーきーくん、たーかくんもそうです)。

  くきが長いたんぽぽは立っていられるか?

 たーかとけんちゃんが見たのは、花で立っていました。
 ふつうのたんぽぽは、くきが長ければ、ななめにたおれていると思います。

 予想
  たーかとけんちゃんが見たたんぽぽは、くきの強いたんぽぽだと思 います。
 くきの弱いたんぽぽだったら、ななめになってたおれたりしている と思います。
だから、たーかたちは、くきの強いたんぽぽを見たと思います。(しょーた)
     

 ☆うーん、たんぽぽにも強いのと弱いのとがあるのかもしれませんね。
わた毛だったらくきが長くてもおかしくない、しかし、花なのにくきが 長いのはおかしい、しょーたくんは、このように考えたのでしょう。

  くきが長いたんぽぽはなぜかれているのか?

  予想
 くきが長いたんぽぽは、みんなのを見てみると、みんなかれていました。
 どうしてかれているのでしょうか?
 ぼくは、ふつうたんぽぽがたいようからもらったえいようは、上のほうにやると思っていました。
 でも、くきが長くなっていたのは、くきにえいようがいっていて、くきがのびてたんぽぽの上のほうにえいようがいかなかったからかれていたのだと思います。
                                       (しょーた)

 ☆くきの長さと栄養との関係を考えています。
このへんはつっこんで考えるとおもしろそうですね。

 
  たんぽぽのひみつ

 くきが長いたんぽぽは、遠くにわた毛をとばせるか?

 予想
 くきが長いたんぽぽがたおれていたら、わた毛を遠くにとばせるか?
 もし、たんぽぽがたおれたままわた毛になって、そのままわた毛が落ちてしまえば、そのたんぽぽの近くに何本もはえてしまうと思います。
  というふうになってしまうと思います。
  ああいうふうにならないためには、ぼくたちがふいたりすることがいいと思います。
 だけど、あんまりもうくきの長いたんぽぽはないと思います。  (しょーた)

 ☆いくらくきが長くても、横になっていたらあまり意味がないかもしれません。

 ゆーやくんは、次のように考えています。


   くきは長いままのだったけど、わた毛は、とちゅうだからなかった

 (自分の考え、予想)
 やっぱり、わた毛がついてるのはくきが長いと思う。
 まだ花の長いのは、わた毛になる前に少しずつくきをのばしていると思う。
 (どうして花のうちにくきを長くするか)
 わた毛になってからだと、くきが長くなる前に風で種がとばされるから。
                                     (ゆーや)

 ☆おもしろい作文です。
  どうしてくきを長くするのか みんなで考えましょう。


 たんぽぽについて、多くの子が調べ始めました。
 たんぽぽがわかるということは、植物がわかるということです。
 これから、葉、くき、根、花など、少しずつ授業で取り上げていきたいと思います。

 植物の生長を学ぶことは、自分の成長過程を学ぶことです。
 成長する条件は?

 たとえば、種自身の力です。どんなに土がやせていても、種に力があればぐんぐんのびます。
 反対に、力が弱ければ、どんなに土が肥えていても枯れてしまいます。
 他にも、育て方の問題など、考えるべきことはいろいろあります。
 水の上げ方一つとっても、難しいのです。
 嫌々世話するのと、大事に世話するのとでは、またまた変わってきます。

 子どもたちは、植物の生長を学ぶことにより、自分たちの成長過程を学びます。
 私も、植物から学びたいと思います。

inserted by FC2 system