子どもが輝くとき 


    水泳指導 編
   
    夏休みの水泳指導。
    泳げない子を指導します。
    2人を担当しました。
    ひとりは、2年生の男の子 Tくんです。
    スポーツ万能の彼が、どうしたことか水泳が苦手です。
    顔をつけるのがやっとでした。
    もうひとりは、私の娘です。1年生。
    お風呂ではもぐれるようになったのですが、プールでは
   やらないのです。
   「こわい。やりたくない」
   
    Tくんから指導します。
    手を持って潜らせます。
    潜るのは、なんとかできます。
    手をもって引っぱるのをやりました。
    こうすると、力が入ってしまいます。
    肘を曲げ、顔をわずかにつける。…
    足を底から離すと、とたんにできなくなるのです。
   「Tくん、君はスポーツが得意なんだから、水泳だってで
    きるよ」
   「先生が引っぱっていくから、もう少し顔をつけてみよう」
    ちょっと早めに引っぱります。
    不安顔のTくん。
    顔をつけるのは一瞬です。
   「いいぞ、よくなっているよ。その調子」
   
    少しずつ、顔をつけるようになりました。
    耳までつけるようになりました。
    肘も伸びてきました。
    伸びるときは、一氣です。
   「よーし、いいぞ。次は、片手を離してみよう」
   「えっ」
   「大丈夫、大丈夫、できるよ」
    片手離しは、すぐにできました。
   「できた」
    うれしそうです。
    次は、両手離しです。
   「大丈夫、すぐ支えるから」
    両手離し、一瞬。
    速いですね。つかまるのが。
   「できた。いいぞ」
    2回、3回と、だんだん離す時間が長くなりました。
   
    娘の指導
   「こわい、やりたくない」
   「大丈夫、やってみよう」
   「何回?」
   「3回」
   「いやだ、1回」
   「じゃあ、2回」
    交渉成立(笑)
    2回潜って終了。
   
    ばた足の指導→Tくんの指導→娘の指導
    このサイクルをくり返します。
   
    Tくんを応援させました。
   「みんなで応援しよう。Tくん、もう少しでできそうなん
    だよ」
   
    3回目。
    Tくんは、自分でやってみるといいだしました。
    目が輝いてきました。
    これです。これを待っていたのです。
    この目の輝きです。
    浮けました。
   「やった、1秒浮けたよ」
   「すごい、すごい」
   「できた!」
    ここは、一氣にいくべきです。
   「3秒浮けたら、9級だよ。もう少しだ」
    Tくんが挑戦します。
    1秒、2秒、1秒、1秒、2秒、そして、ついに3秒で
    きました。
   「バンザーイ、できたよ」
   「みんな、きてー」
   みんなを集めました。
   「Tくんが浮けるようになったよ。見て見て」
    できました。
    大拍手。
   
   「合格おめでとう」
    すぐにプールからあがり、リボンをとりにいきました。
    カードにサインして、白いリボンを1本わたしました。
    すごくうれしそうでした。
   
    我が娘は…
   「こわい、やりたくない」
   「大丈夫、やってみよう」
   「何回?」
   「3回」
   「いやだ、1回」
   「じゃあ、2回」
    交渉成立(笑)
    2回潜って終了。
   
    やる氣がね…
    
    4回目、Tくんに蹴伸びを教えました。
   「できないよ」
   「できるよ。先生がすぐに手をつかむから大丈夫」
    最初は、蹴ったらすぐに手をつかみ支えました。
    これをくり返します。
    だんだん、距離を離していきます。
    
   「さあ、やってみよう」
    1m離れました。
    できました。
   
    我が娘は…
    状況変わらず。
    ここで、切り札を出しました。
   「潜れるようになったら、アイスクリーム買ってあげるよ」
    物でつってはいけないんですけど(笑)
   「本当、じゃあ、やる」
    現金だねー。
    親の顔が見たい。
    あっ、私か(笑)
    もぐりました。
    3回連続。
    アイスクリームの効果は絶大です。
   
    5回目、ばた足の子どもたちにはクロールを教えました。
   
    Tくん、距離を離します。
    1.5m。
    できました。
   「もうできるぞ」
   「いけー」
    できました。
    ついに、蹴伸びができました。
   「やったー、できた」
   
    娘に、変化があらわれました。
    Tくんができるようになったからです。
    目が変わりました。
    きらりと光りました。
    手をもって引っぱります。
    顔をつける練習です。
    もう、いやがりません。
   
    6回目 クロール、一人ひとりを指導します。
    かなり進むようになってきました。
    素直な分、吸収力があります。
   
    Tくん、ばた足を指導します。
    ばた足は、いけます。
    それほど力が入っていません。
    ひざが折れません。
   「できるよ、やってみよう」
    蹴伸びからのばた足です。
    3mいきました。
    ここが壁です。
    息は続くと思うのですが、顔を上げてしまいます。
   「あと、これくらいだよ。もう少しだよ。がんばって」
   「やる」
    力強い言葉。
    今日中にできると確信しました。
   
    娘は…手を引きます。顔をつけます。
   「いいぞー、その調子」
   「片手離してみようか」
   「うん」
    片手離しはできました。
    やる氣を感じます。
    いける!
    両手離しです。
    できました。
   「すごーい、できたよ」
   
    7回目 Tくんは、4mまでいきました。
    あとは根性だ!
   
    娘は…
    すごいやる氣です。
    アイスクリームはどこかへ飛んでいきました。
   「手を離してみる」
    目が輝いています。
    自分からやるというのです。
    1…2…
    2秒浮くことができました。
   「できたー、やったー」
    ちょうどそのときです。
    家内が車で通りかかりました。
   「おーい、ちょっと見て」
    浮きました。
   
    終了の時間です。
   「Tくん、時間だけど、やる」
   「やる」
    よーし、ラストだ。
    他の子どもたちは、プールから上がって体操をはじめま
   した。
    本当に、本日のラストです。
   「いけー」
    Tくんが、うなずきます。
    壁を蹴りました。
    すーっと伸びます。
    いいぞ。
    ばた足。
    その調子。
    4m。
   「あと少し、がんばれー」
    5m。
    いきました。
    ついに5mいきました。
   「やったぞ、Tくん、5m泳げたよ」
   「うん」
   
    見学していたお母さんも喜んでくれました。
   
   

   水泳指導 編 2
   
   「今夏は、水泳指導に力を入れよう」
    体育主任と私は、毎日水泳指導にいくことにしました。
    主任さんには、上級コースを見てもらいました。
    私は、初級コースです。
    25m泳げない子、フォームがよくない子の担当です。
   
    強者が2人います。
    5年生のSくん、Tくんです。
    25m泳ぐのがやっとです。
    それも、犬かきのようなめちゃくちゃな泳ぎです。
    力が入り、体はがちがち。
    これでよく25m泳げたものです。
   
    クロールを教えることにしました。
    腕のかき方です。
    それぞれ、手を取って教えました。
   
    マンツーマンでやっているときはいいんですけど…
    他の子の指導をしていると、おしゃべりを始めます。
    うまくなろう という氣持ちが感じられません。
   
    Sくん、Tくんには、他の子の3倍かかわることにしま
   した。
   「Sくん、うまい。それでいいんだよ」
   「Tくん、いいぞ、天才!」
    ほめまくりました。
   
    それからです。
    少しやる氣になったのは。
   
    しかし、がちがちは変わりません。
   
    3回目、4回目の指導は、できませんでした。
    私が日直だったからです。
   
    2人は、毎日通っているそうです。
    上達ぶりを聴きました。
   「うーん」
    体育主任はうなっています。
   
    5回目(私としては3回目)の指導。
    スクーターを教えました。
    ※手をかいたら、前でそろえます。
     「1,2」と数えます。
     それからかきます。
    フォームをよくするための練習です。
   
    効果がありました。
    めちゃくちゃなフォームは、改善されつつありました。
   「いいぞ、うまくなったぞ」
    今日は、混じりっけなしの本音です(笑)
    このへんから、おしゃべりしなくなりました。
    
    ついに、クロールで25m泳げるようになりました。
    あれだけひどかったフォームが、さまになってきました。
    クロールになってきました。
   
    6回目、50mいきました。
    いわれたことを、素直に練習します。
    アドバイスを、きちんと聴きます。
   
    次は、平泳ぎです。
    あと3回しかありません。
   
    まず、タイミングをとることから始めました。
    かきと蹴りのタイミングが難しいですね。
   
    手を取って教えました。
    体で覚えるパターンです。
    この日の最後には、なんとかタイミングが取れるように
   なりました。
    カエル足も、教えました。
    バタフライの足になっています。
    Sくんは片足、Tくんは両足です。
   
    7回目、かきと蹴りのタイミングはよくなりました。
    残るは、足です。
    手を取って教えました。
    
    なかなか、上達しません。
    手を離すと、すぐバタフライの足になってしまいます。
   
    8回目、いよいよラストです。
   
    今日も、手を取って指導しました。
   
    よくなってきました。
    Sくんは、何とかカエル足もどきになりました。
    Tくんは、片足がカエル足になりました。
   「いいぞ、よくなってきたぞー」
   
    この日は、気温が低く、多くの子が途中で上がりました。
    しかし、S、Tコンビは、上がりません。
   「もう一度やる。先生見ていてね」
    何度も、何度もやるのです。
    驚きました。
    このねばり、集中力。
    目が生きています。
    燃えています。
    闘志むき出しです。
    いつも、ぼーっとしている2人が(失礼)…
    こんな姿を初めて見ました。
    私も体育主任もびっくりです。
   
   「もう一度、もう一度」
    ※なんか、『一つの花』みたいですね。
   
    ついに、2人ともカエル足になりました。
    
    25mに挑戦。
   
    ついに合格!
   


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