いきなり表現読み



 表現読みを指導していますか。
 スラスラ読めるようにならないとやらない人はいませんか。
 1年間指導しないで終わってはいませんか。

 いきなり表現読みから入りましょう。
 
 2年生の例です。『ふきのとう』という教材です。


  ふきのとう

  よが あけました。
  あきの 光を あびて
  竹やぶの 竹の はっぱが、
  「さむかったね。」
  「うん、さむかったね。」
  と ささやいて います。

 会話文を取り上げます。
 だれもがスラスラ読めます。
『スラスラ読めたね。すごい、さすが2年生です』
 子どもたちは、まんざらでもない顔つきです。
「こんなの簡単だよ」
『そう、簡単なの。じゅあ、ここに出てくる「さむかったね。」の寒さは、どれくらいの寒さなんですか?』
「?」
寒いといっても、いろんな寒さがあるでしょう。
 ちょっと寒いとか、ものすごーく寒いとか』
「すごく寒かったと思う。だって雪があるもん」
『でも、君の読み方では、すごく寒いという感じがしなかったよ』
「………」
『すごく寒かった という感じを出して読んでみよう』

 練習させます。
 子どもたちは、力を入れて読み始めました。
 「寒かった」を強調しているのです。
 だいたいが同じような読み方になっています。
『すごく寒かったといっても、いろいろあるよ。
 あたたかい部屋から外に出たら、風がびゅーんとふいてきたとき。
 冬、自転車に乗っていたら、指先が冷たくなって指が動かなくなったと
 き。
 先生は、バイクに乗っているでしょう。
 冬なんて、30分も乗ると体ががちがちになるくらい冷えてしまうんだ。
 ほっぺが動かなくなってしまって、口があかないこともあるんだよ。
 みんなは、そういうことなーい?』
「あるよー」(多くの子どもたち)
「冬に自転車に乗っていたら、指が動かなくなっちゃってすごく寒かった」
「ぼくは、スキーをやっていたとき、鼻水凍っちゃったんだよ」
「えーっ、本当?」
「北海道では、冬おしっこをすると凍っちゃうという話を聴いたことがあります」
「えーっ」
寒い といってもいろいろあるんだね。
 この「さむかったね。」は、例えばどんなときの寒さなのかを考えてみよう』


 少し練習させてから、発表させました。
 「さむかったね」。」を読ませる前に、どんなときの寒さなのか イメージをいわせました。
 一番うけたのは、「もうすぐ死んじゃうくらい寒い」といって、歯をがちがちさせながらいった「さむかったね。」です。
 この間7分、大いに盛り上がりました。

 教師の働きかけが大切

 表現読みをさせるとき大切なのは、教師の働きかけです。
 まずは、イメージさせます。 
 次に、子どもの知的好奇心を喚起する言葉かけをします。

 解っているようで分かっていない点を指摘すると、子どもは「はっ」とします。
「そうか、こういふうにも考えられるのか」
「そんな考えもあるのか」
と、思考をゆさぶられるからです。


 北原白秋 『お祭』

 『お祭』(北原白秋)という詩があります。
 群読に適した詩として有名ですね。
 冒頭は、次のようになっています。

 わっしょい、わっしょい、
 わっしょい、わっしょい。

 御輿をかついでいるときのかけ声です。
 いろいろなふうに読めます。
 詩を与えるだけで、子どもたちは多様な読みをします。
「わっしょい、チャッチャ、わっしょい」
と読む子もいれば、
「わっしょいわっしょい」
とつなげて読む子もいます。

 もっと多様な読みを引き出すために、言葉かけをしました。

1 御神輿はどこにあるのですか。
  遠くですか、近くですか、目の前ですか。

2 だんだん近づいてきました。       
  どう読みますか。

3 「わっしょい」は4つあるけど、だれがいっているのですか。

4 最高に盛り上がったときの「わっしょい」は。

5 かつぎはじめで、元氣があるときの「わっしょい」は。

6 疲れて、かつぐのがだんだんきつくなってきたときの「わっしょい」は。

7 疲れ切って、もうだめだというときの「わっしょい」は。

8 お腹が減って、腹に力が入らないときの「わっしょい」は。

9 お腹がピーピーで、腹に力が入らないときの「わっしょい」は。

10 御神輿が、二台だったら。

11 御神輿が二台あって、はりあっているとしたら。

12 子どもがかついでいたとしたら。

13 女の人だけでかついでいたとしたら。

14 おかまがかついでいるとしたら。

15 リーダーのかけ声に合わせているとしたら。

 爆笑の連続。
 どれもおもしろかったです。

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