波及学習

 

 

 
 
波及学習

 
驚くほど子どもが伸びる学習法です。


波及学習のアウトライン

「これは道徳でやるべきことだ」
「国語でそんなことをすべきではない」
という人がいます。各活動をバラバラに考えているのです。
 国語は国語、算数は算数と分けて考えると力が分散します。各活動の中に共通性(たとえば、共通する意識・認識、要素、力など)を見出し、関連づけて考えるようにしたいものです。

 何かを学んだら、すぐに活かすように指導します。
 たとえば、算数で「計算したら確かめる」ことを学んだとしましょう。
 漢字を書いたときに、「確かめる」ことを意識し、正しい字か、筆順は正しいかをチェック します。
 理科で実験したとき、一回で終わりにせずもう一回やって確かめます。
 ぞうきんで机を拭いたとき、汚れが残っていないかどうかを手で触って確かめます。
 このように、学んだことを他の活動に活かすのです。
 また、学んだことはすぐ行動に移すように指導します。
 たとえば、「ゴミを拾う」とを学んだら、その日からゴミを拾うようにさせます。
 学校でできるようになったら、「家でもやってみよう」と働きかける。活動範囲を広げます。
 「学んだことを活かす」を意識して行動するようになると、子どもたちの力は、飛躍的に向上します。
 
 

 

 

 

「できた」ところがスタート 

 子どもたちがあることを学ぶとしましょう。
 ある程度までいくと、「できた」と満足してしまいます。
 かなり低いレベルで「これでよし」と思ってしまうのです。
 子どもたちのいう「できた」は、「できたつもり」になっている場合が多いのです(※ 教師も同様です)。
 多くの場合、「できた」は、本当にできたのではなく「できたつもり」になっています。だから、ちょっとやらないと忘れたり、元に戻ったりしてしまうのです。
 波及学習は、「できた」「これでよし」と思ったところからスタートします。 たとえば、100マス計算で2分切れるようになったら、次のことを意識させます。
    
  
  正確にできたか
  ていねいにできたか
  迅速にできたか(スピード)
  工夫したか、コツを発見したか


 次はどれを意識し練習するかを決める。→意識して練習する。

 100マス計算に取り組む過程で、計算力はもちろんのこと、上にあげた正確さ、ていねいさ、素早さ、工夫する力に加え、集中力が身につきます。また、練習方法も知ることができます。
 これらの力を意識して、波及させるのです。
 100マス計算のたし算ができるようになったら、次はかけ算に取り組みます。上のことを意識して練習すると、3分の1位の時間で同じレベルに到達できます。

 


 
活動をリンクさせる
 (つなげる・結びつける)
  波紋を広げる

 1つの活動で得た力を、他の活動で使わせます。
 子どもたちは、計算練習と漢字練習とは別個のものだと思っています。だから、多くの場合、学んだことを他の活動に活かそうとしません(無意識のうちに活かしている子はいますが)。実にもったいない話です。
 「学んだことを(他の活動にも)活かす」ことを意識させます。
 漢字の学習に活かすとすると、たとえば次のようなことをやってみるのです。
  正確さ →   よく見る。筆順、構成
  ていねいさ →止め・はね・払いなどに氣をつけて書く
   練習方法 → すぐに覚えられる文字
            なかなか覚えられない字に
            分けて練習する

 これができるようになると、驚くほど実力がアップします。
 飛躍的に伸びます。

 

 
 波及学習

 波及学習の切り口を見ていきましょう。

 意識操作

・各活動を関連づけて考える
 ・共通する意識
 ・共通する力
  (例)集中力、聴く力、話す力、表現力、調べる力、予想する力
     見る力、考える力、実行力など
 ・共通する認識(上達のプロセス、見通し、自分の役割)
 ・共通する方法(練習方法)
 ・学んだことを活かそうとする

 広げる
 ・バリエーション…いろいろな角度からアプローチする
 ・レパートリー…学んだことを他の活動に活かし、得意手をふやしていく
         新しいことに挑戦する、苦手なことに挑戦する
 ・見方・考え方…多面的な見方ができる(複眼思考)
 ・場…教室→専科の教室(体育館、保健室)→廊下
    学級→学年→学校
    学級→家庭→地域→いろいろなところで→どこでも
 ・人…自分→親しい友人・班の人→学級全体
 ・空氣…空氣をもらう→空氣をつくる
      ↓
人間としての幅を広げる

 

 高める
 ・レベルアップ…質・量・密度・強さ・しなやかさ・スタミナ、自覚
           プライドなど
 ・慣れる
 ・正確さ
 ・ていねいさ
 ・素早さ(スピード)
 ・効率のよさ(見通し、だんどり、準備など)
 ・タイミング
 ・工夫
 ・集中
 ・持続
     ↓
パフォーマンスの向上


 深める

 ・自問自答、内省→自分の立場、役割を自覚→行動する
       もう一人の自分をつくる
 ・見方・考え方を深める(豊かになる、許容範囲が広がる)
 ・見る→観る・看る・洞察する
     (一歩突っ込んで観る、見えないものを観る)
 ・色眼鏡で見る→肯定的に見る、素直に見る
 ・氣働き…いわれて行動→自分が氣づいて行動
 ・自分がやる→人をサポートする
 ・認識・いわれたとおり行う→意味を考えて行う→プラスαの行動
   ・やってもらう→人のためにやる
   ・助けられる自分・助ける自分
   ・人のためにやる→やらせていただく→ただただやる
   ・ただやる→意味を考えてやる→想いをこめてやる
      ↓
 人間としてどう生きるか  
  (フィロソフィー)
 自分の哲学をつくる 

   *意識操作が土台となっています。
   *広げる・高める・深めるは、バラバラではありません。
    リンクされています。

 波及の「形」  
 ・個  ・一点突破→他の活動
 ・集団 ・一人→数人→全体
     ・一つの班→他の班→全体
 先日行われたJリーグオールスターと同じで、個のレベルが高いと全体ではものすごくレベルがあがる。
 
 波及学習の成果
 波及学習が軌道にのってくると、予想以上に子どもは伸びる。
 教師から離れても、自分で自分を向上させることができる。
 自分の役割を自覚し行動できる。


 厚みをつける

 単線ではなく複線
 多角的な思考
 懐の深さ(清濁併せのむ)
    ↓
 人間の器を大きくする 

 

 実践例
 
1 学芸会の取り組み
   今まで学んだことを発展させる。
   新しいことを学習させる。
   学芸会で学んだことをほかの学習に活かす。→(例)社会科見学
     何を活かすか
       発言の時の言い方。
            表情
            視線(誰を見るのか)
            強調点
            声の大きさ
            声のコントロール
            
2 総合学習「社会科見学」(中央防波堤、葛西臨海公園)
   学芸会で学んだことを活かす
     役割分担(自分の役をきっちりこなす、自分の役目に責任を持つ)
         しおりづくり、司会、学習、レク(クイズ、歌、ゲーム)
         クリーンズ、お礼係など
     基本(よけいな動きをしない、反応する)
         だれかが話し出したら、黙って話し手を見る
         「聞こえない」などと文句を言わない
         協力する(『方言と共通語』で学んだ共通語を活かす)
   日頃やっていることを活かす
     清掃(公園、バスの中など)クリーンズを中心に
     歌(全員で歌う、ソロ、男女別、グループ、有志)
      (流行歌も歌う声で歌う)歌係を中心に
     授業(感想発表、氣づきの発表など)


 実践事例

 学芸会の取り組みを発展させる
 学芸会の取り組みをへて、子どもたちは大きく成長した。集中力、反応の速さなど、あらゆる面で向上している。
 これからが楽しい。たとえば、学習の効率は5倍以上になる。今まで5時間かけていたところを1時間でできるようになるし、極端にいえば、半年かかってできるようになったことが1週間もあればできるようになる。それくらいスピードアップするのである。パソコンのソフトではないが、「驚速」となる。
 
 ☆取り組み
 本格的な取り組みを始めた。取り組みというのは総合的な学級づくり・授業づくりのことである。学芸会の成功でレベルアップした子ども達。こちらのいうことが、以前より入っていく。子どもによっては、ぐーっと入った。
 登校するときたばこの吸い殻を拾う子もでてきた。
 いよいよスロットル全開だ。
 たとえば、次のようなことに取り組んでいる。
  @社会科見学のまとめ(役割分担の反省、新聞づくり)
  A学芸会文集づくりプロットを考える→学芸会の文集づくり
  B歌(『地球の子ども』、『すてきな友達』)を教える→1月の発表会に向けて
  Cポートボール(迅速な行動)→すべての行動を迅速に
  D子どもが創る授業(算数プリント、漢字プリントを作らせる)
  E自問清掃(レベルアップ しゃべらない、見つけるなど)
  Fフレネ学校のビデオを見せる(チャイムがない、時間になるとすっと集まり学習し始める、ふざけたりしゃべったりしない)→意識の変化
  Gイニシアチブ(人のために行動する)→思いから行動へ
  
 ☆子どもへの働きかけ
 同じ活動に活かそう
  歌   
 「語りかけよう」など学芸会の歌で学んだことを、今習っている歌に活かす。
   「地球の子ども」「すてきな友達」
   歌詞の解釈
   表情
   表現
 似ている活動に活かそう
  台詞   発言するときのいいかた
    声の大きさ
    トーン
    表情
    強調
    工夫

 違う活動に活かそう
  反応    発言者のいうことに反応する
        「はじめます」の合図でさっと行動する

  移動    音を立てないで廊下を歩く
        黙って移動する
        次になにをやるか考えて移動する

 総合的に活かそう
 学んだことを
  広げる
  高める
  深める

  厚みをつける


 @広げる
 学んだことを広げていく。たとえば
  学級→学年→学校
  学校→家庭
  学校→地域
というように、活動する範囲を広げていく。
 ある子は、児童会室掃除で学んだゴミの取りかた、机の拭きかたなどを教室掃除に活かしている。ある子は、校舎裏の落ち葉を拾っている。ある子は、朝学校に来るときにゴミを拾ってくる。
 逆もいい。家庭で学んだことを学校で活かす。

 A高める
 活動の質を上げていく。たとえば
  掃除 ほうきで掃く
    →同じ時間だったら掃く範囲が広がっていく(より広く)
     同じ場所だったら掃く時間が縮まっていく(より速く)
     よりていねいに
     より徹底的に
     ほうきの使いかたを工夫する
     ゴミの取りかたを工夫する

 B深める
 活動の意味、方法について考える。
  漢字テストの練習 ただやるだけから
    →本番通りやる
     答え合わせをし、できなかったところを重点的に練習する。
     もう一度テストし、できるようになったかどうかを確認する。
     すぐ書けた漢字
     ちょっと考えてしまった漢字
     書けなかった漢字
     間違えて覚えていた漢字などに分ける。
     それぞれの漢字により練習方法を変える。
     漢字練習の意味を考える。
     練習することからなにを学んだか考える
      →ノートに書く。友達の発言を聴いて考える。
     漢字練習で学んだことをどのように活かすか考える。

 このようにして、能率、効率を高めていく。できることを増やしていく。
 それにともなって人間的にも成長していくと思う。
 
 

 

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