読解力
    読解力を育てる  
 

 
 
 読解力を育てる

 杉渕流国語は、イメージする力を重視しています。

 読み取る力
 イメージ豊かに読み取る力 
 想像力


 などの力を育てましょう。

 「ふくらませる力」(想像力)をつける方法を紹介します。
 発言、作文などの力の元になる重要な力です。
 感性が育つという、特大のおまけがつきます。

 『土』(詩 三好達治)を取り上げます。

 
  
  土      三好達治   

 ありが
 ちょうの羽をひいていく
 ああ
 ヨットのようだ



 この詩を取り上げます。

 ※原文は

  

  蟻が
  蝶の羽をひいて行く   
  ああ
  ヨットのやうだ



 言葉かけが鍵になるでしょうね。。
 考える視点を与えるようにします。
   発問する
   ヒントを与える
 いろいろな方法があるでしょう。
 子どもの実態に応じて、使いわけましょう。

 1

 この詩について、子どもに考えさせます。
 私の場合、「なんでもいいから、思いついたことを書いてごらん」
といいます。
 しかし、書けない子は、まったく書けません。一つも書けない子も
います。
 この子たちは、何を書いたらいいか、どうやって書いたらいいかわ
からないのです。
 いろいろ質問するといいでしょう。
「この詩の題名は?」
「土」
「それを書くといいね」
 すぐに書かせます。
 ・この詩の題名は「土」です。
と書かせます。
「この詩を書いた人はだれですか」
「三好達治」
 書かせます。
 ・この詩を作った人は、三好達治です。

 なんだ、そんなこと、当たり前だと思うでしょう。
 その通りです。
 でも、ちょっと待ってくださいよ。この子たちは、一つも書けなか
ったのです。
 それが、二つ書けたのです。
 当たり前のことを当たり前にやる これは大変なことなのです。

「この詩には、何がでてきますか」
「あり」
「ちょう」
「ヨット」(これ、おもしろいでしょう)
 書かせます。

 このようにして書かせれば、少しは書けます。

 まったく書けない子には、例えば、次のことを書かせます。
  題名
  作者名
  出てくるもの

 これからが本番です。

 2

 1では、まったく書けない子に対する指導例をあげました。
 書けない子は、「書けない」という意識が強いのです。
 自分でブレーキをかけていて、前に進まないといっているようなも
のです。
 この「意識」は、すべてを決めるといってもいいでしょう。
 教育とは、意識改革なり です。
  何を書くか
  どう書くか
 を教えることにより、だんだんと「書けない」という意識が変わっ
てきます。

 今回から、「100倍細かく」の手法を使ってみます。

 書けない子は、全体しか見ていません。
 しかも、漠然と見ています。
 イメージで、「書けない」といいます。
 やる前から「書けない」と決めているのです。

 見るところを焦点化させることが必要です。
 まずは、「ありが」というところです。
 ここだけに限定して、考えさせるのです。

「ありについて、知っていることを書いてごらん」
 これでけっこう書ける子は書けます。
 詩に出てくるありからは離れてしまいますが、今の段階ではいいの
です。
  土の中に巣をつく。→これって、後で使えます。
  力が強い。→これも使えます。
  色が黒い。→これも使えます。
  小さい。→これまた使えます。
など、子どもはいいます。
 それらをすべて書かせます。
 箇条書きさせるのがいいと思います。
 番号をつけさせるのもいいでしょう。「何個見つけた」
 子どもから意見が出てこない場合は、親が例を出しましょう。
 いっしょに考えましょう。

 ありについて書かせます。
 兄弟でやると、効果倍増です。
「お兄ちゃんがいったことで、いいなあと思ったことは、まねして書
 こう」
 まねさせる→これもポイントの一つです。

 3

 指導とは、見えないものを見えるようにさせることです。
 子どもに、見えないことを、見えるようにさせるのです。
 子どもは、全部見えているつもりになっています。

 コロンブスの卵 という話がありますね。
 あれです。
 「何だそんなこと知ってるよ」
 いわれればわかるけれど、いわれなければわからない ということ
なのです。
「なーんだ、そんなこと知ってるよ」
「じゃあ、どうして最初にいわなかったの」
「…」
 つまり、発想がないのです。
 これは決定的な違いです。

 「あり」についての例

 ちょうの羽を運んでいるありは1匹ですか。
               数匹ですか。
               たくさんですか。
 ありは何ありでしょうか。
 どうやって運んでいるのでしょうか。
 ありは、どっち向きに運んでいるのでしょうか。
 ありはどこに向かって運んでいるのでしょうか。
 運び始めてからすぐですか。しばらくたっていますか。

 などと聴いてみましょう。
 子どもはハッとするはずです。

 いわれれば、考えられます。
 しかし、いわれなければ「ありのまま」ではありませんか。

 4

 3の続きです。「あり」について。
 まだあります。
 ちょっと考えてみましょう。
 けっこう出てきますよ。

 この「あり」って、元氣なんでしょうか。
 疲れているんでしょうか。
 満腹なんでしょうか。
 腹ぺこなんでしょうか。
 力が強いんでしょうか。
 弱いんでしょうか。
 軽々運んでいるのでしょうか。
 必死に運んでいるのでしょうか。

 一生懸命運んでいるように見えたのでしょうか。
 よたよた運んでいるように見えたのでしょうか。

 あれども見えず。
 見ようとしなければ見えません。
 でも、見ようと意識すると見えません。
 3Dの絵に似ていますね。

 見えないものが見えるようになると、子どもたちは国語が好きにな
ります。
 コツをつかむとあら不思議。あとからあとから見えてきます。
 トレーニングすれば、だれでも見えるようになります。

 5

 案外氣づかない点について考えてみましょう。
 私が書けば、「何だそんなことか」と思う人もいると思います。

 季節はいつですか。
 朝、昼、夜 いつのことでしょうか。
 天氣は?晴れですか、曇りですか、雨ですか。
 温度は?あたたかいですか。寒いですか。
 場所はどこですか。

 これらのことは、いろいろの教材で使えます。
 基本的なことですが、応用範囲は広いです。

 6

 「ちょう」について考えてみましょう。
 このちょうは、何ちょうでしょうか。

 子どもからは、アゲハちょう、もんしろちょう、もんきちょうなど
が出されます。
 イメージの問題ですね。
 アゲハだったら、大きすぎて運べないとか、けっこう話し合いは盛
り上がりま
すよ。
「ヨットのようだ」と書いてあるから、もんしろちょうという子が多
いですね。
 ヨットの帆は白 というイメージを持っているのでしょう。

 このちょうは、生きていますか、死んでいますか。

 これも、意見がわかれます。

   おふざけバージョン
 このちょうは、何ちょうでしょうか。
   1 ほうちょう
   2 あっちょう(ブルース・リー)
   3 その他いろいろありますけど…

 7

 「ちょうの羽」について考えてみましょう。

 ちょうの羽のイメージです。

 ちょうの羽だけなのでしょうか。
 それとも、ちょうなのでしょうか。
 この羽は、きれいなのでしょうか。
 よごれているのでしょうか。
 ぼろぼろなのでしょうか。
 1枚だけなのでしょうか。


 8

 「ひいていく」について考えてみましょう。

 「いく」となっていますね。
 まずは視点の問題です。
 話者(この詩を語っている人)から見ると、離れていく 感じです
ね。
 目の前を通過していく というようにもとれないことはありません。

 「ひいていく」と「ひきずっていく」は、どう違うでしょう。
 「ひいていく」と「ひっぱっていく」は、どう違うでしょう。

 「ひいていく」
  ゆっくりでしょうか。
  速いのでしょうか。
  ずるずるずる という感じでしょうか。
  するするする という感じでしょうか。
  ときどき立ち止まるのでしょうか。

 「ひいていく」とき、羽はどのように動いているのでしょうか。

 9

 「ああ」について考えてみましょう。

 この「ああ」は、納得の「ああ」でしょうか。
 感動の「ああ」でしょうか。
 驚きの「ああ」でしょうか。

 ちょうがかわいそうだと思って「ああ」といったのでしょうか。

 「ああ」は、言葉に出していったのでしょうか。
 心の中でいったのでしょうか。


 10

 話者は、ずーっと見ていたのでしょうか。
 ちらっと見たのでしょうか。
 このあとも見続けたのでしょうか。

 この詩の前の場面を想像しましょう。
     あとの場面を想像しましょう。

 「土」は何を例えているのでしょう。
 「土」が海だとすると、その海の色は。
 その海は、凪ですか、荒れていますか。

 などなど、いろいろと考えられます。

 教師の働きかけ(発問、アドバイスなど)によって、子どもに考え
をもたせることができます。
 ぜひ、やってみてください。


 ◆黒い目のきれいな女の子

 この一文を解釈させます(『日本語の構造』中島文雄著 岩波新書 より)。
 「土」で学習したことを活かしましょう。

 「黒いって書いてあるけど、何が黒いのですか」
「目でしょう」
何の疑いもなく答えます。
「じゃあ、黒いのあとに点を打ってみましょう」

  黒い、目のきれいな女の子

 こうすると、黒いのは目ではなくなります。
 一体何が「黒い」のでしょう。

 ●黒い
 イメージをふくらませてみましょう。
 いろいろなことが考えられます。
 ・黒い服を着ている
 ・黒っぽい服を着ている
 ・肌の色が黒い(地黒)
 ・日焼けして黒い
 ・お葬式に行くところ
 ・髪の毛が黒い
 ・黒人
 ・黒い帽子をかぶっている
 ・お化粧して目のまわりが黒い
 ・暗い雰囲氣
 ・腹の中が黒い(それは私です)

  黒い目の、きれいな女の子

 何がきれいなのでしょうか。
 
 ●きれいな
 「黒い」のときと、同じように考えさせます。
 親子で考えるといいですね。
 ・美人
 ・かわいい
 ・化粧している
 ・着飾っている
 ・清潔
 ・肌がきれい
 ・心がきれい
 などなど、いろいろ考えられます。

 てんで話にならない

 点か分け目の戦い

 点を打つ位置で、意味が違ってきます。

  黒い、目のきれいな女の子

  黒い目の、きれいな女の子

  黒い目のきれいな、女の子

  黒い目のきれいな女、の子

 など。

 
考えてみてください。

inserted by FC2 system