100倍細かく



 
 100倍細かく

 スコープです。
  ・望遠鏡
  ・虫眼鏡
  ・顕微鏡
  ・広角レンズ
 です。

  物の見方・考え方を育てる授業です。

100倍細かく
    
 −子どものやる氣をひき出すための手だて−

 ミクロの目をもとう                                                             
粗い指導から脱却しよう
 普通の指導は、粗いというか、粗すぎる。その子にとってハードルが高すぎる。泳げない子に、「オリンピックにでて金メダルを取れ」といっているような指導を平氣でしているように思う。
 教師は、指導の粗さに氣づいていない。
 指導の粗さを棚に上げ、子どものせいにする。
 「どうしてできないのか」と子どものせいにするなかれ。
 自分の指導を見直してみよう。

 はるか彼方のことをいわれても「すごい」「私にはできない」で終わってしまうことが多い。人がやる氣になるのは、一歩先(努力すれば手が届く範囲)である。
 私のいう100倍細かくとは、一歩先の指導ともいえる。
その子(一人ひとり)にとって手が届くところまでおろす ということである。

100倍細かく 杉渕流の指導
 ミクロの目をもつ
  ミクロの目
    虫眼鏡 望遠鏡      パノラマ(広角)
    顕微鏡

以上、3つの目が必要。
 たいがいの場合、普通のレンズ、しかもピンぼけで終わっている。それでいて、子どものせいにしている。

 まずは、ピントを合わせる。→ポイントを見つける。
 ※ポイントの発見については、またの機会に…(訊かれれば答えます)
 ミクロの目(虫眼鏡・顕微鏡、望遠鏡、パノラマ)で見る。→100倍細かくする。

ミクロの目をえるための方法

言葉を意識して使う
 言葉を使うのは難しい。わかったつもりで使っているのである。何となく使っているのである。 
 たとえば「よく考えなさい」
 「よく考える」とはどういうことだろうか?
 立ち止まって考えてほしい。
 10以上のことが、ぱっといえただろうか。
 考えてみると、わからなくなるだろう。
 「よく考える」とわからなくなるのである。
 教師がわからないのだから、子どもはもっとわからない。「この先生、何いってんだ」と反発するか、「ああ、おれはできない」と落ち込むかのどちらかだろう。
 私たちは、言葉を意識しないで使うことが多い。
 意識してみると、そこに大きな問題を発見するだろう。
 自分がよく使う言葉を書き出してみよう。
  例 「一人ひとりを大切にする」「姿勢をよくしなさい」「きれいにしなさい」

100倍細かく
 自分が使っている言葉、指導を100倍細かくしてみよう(細かくといっても神経質ということではない。細やかということである)。
 100のステップをつくってみよう。
 できるわけないという人もいるだろう。
 できるできないかは結果である。
 挑戦する氣迫、行動が大切なのである。
 その過程で何かを発見するだろう。それが大切なのである。
 ※10のステップからはじめるのもいい。
 ※実践がうまくいかないときは、言葉、指導が粗いのである。
  →実践を改善するチャンス。
 ヒント
 論理的というよりは、イメージさせるものがいい。
 少し努力すれば手が届くくらいにするといい(30人子どもがいれば、30通り)

 さあ、書いてみよう
 考えるだけではダメである。頭でわかっているようでも、実際にはわかっていないことが多い。漠然としているのである。具体的に書いてみよう。
 はじめはすぐに鉛筆が止まってしまうだろう。2つくらいしか書けないかもしれない。それだけ、粗いということである。
落ち込む暇があったら、トレーニングしよう。
 今回の合宿でやったように、これからもやってみよう。
 トレーニングしているうちに、だんだん書けるようになってくる。

100倍細かく
 これは、学級づくり・授業づくりの極秘伝である。
 奥は深い。
実践しているうちに、それがわかってくる。

 100倍細かくの実践例

 ある人から相談されました。同じサークルで勉強している熱心な人です。1年生を初めて受けもったときのことです。
  さて、レポートに「意思表示ができない子への指導について実例を話しながら、悩みを話しました。
 ごく親しい子には言えるけれど、 他の子・集団のなかでなどのなると、黙ってしまう・・以前に比べ、私もあせらずまとうという気持ちになっていますが紙一枚とりにも 来れず、こちらも他の 子にかまけて、ふと気づくと何もしてないでボーとしていた・・・という状態 や班の話し合いなど「何にもいってくれないよー。」とまわりの子が困っている のをみると言えるようにさせていくか(プレッシャーをかけて?)成長と共に言えるようになるまで長い目でみていくか・・ という内容でした。 明快な答えは 得られませんでしたが、やはり、皆さん「待つ」という意見でした。

 私の返事

 さて、私ならどう指導するかを考えました。
 まずは、その子を見て指導法を考えます。プレッシャーをかけてもいい子だったら、どんどんかけます。
 しかし、ガラスのように繊細な子(例えば、私のように(笑)には、とことん過保護にします。といって、甘やかすわけではありません。
 教師は、とかく結果を求めがちです。すぐに、極端にいえば、その日のうちに結果を出そうとします。しかし、子どもの成長は、すぐにというわけにはいきません。
 その子が、少しずつ進歩するように、たくさんのステップを踏むでしょうね。
 プリントすら取りに来られない。これがスタートです。0です。ここから指導がはじまるのです。
 親しい子と話せるだけでもいいじゃないですか。それを、だんだんと増やしていけばいいのです。
 その子のためにグループをつくります。親しい子と一緒にさせます。
 それでできるようになったら、一人だけ、次に親しい子に変えます。
 このようにしていますか。
 いきなり全員の前でいわせようとしていませんか。

 待つ といっても、いろいろあります。私の考える待つとは、しかけて、「結果が出るのを待つ」ということです。何もしないということではありません。このへんは、わかる人にはわかりますが、わからない人にはわかりません。

 うまくいかないときは、ステップが粗いのです。水泳でいえば、顔を水につけられない子に、25メートル泳げといっているようなものです。

 その子を見て、その子のできるところから取り組むべきでしょう。
 私は好き嫌いをなくす指導で、「スプーン1杯牛乳を飲む」ことからはじめました。もちろん、1杯といっても、1滴、2滴、3滴というように、ほんの少しずつ増やしていったのです。1年かかりましたが、その子は牛乳1本を飲むようになりました。
 これくらい時間をかければ、その子も「クラス全員の前で発言する」ようになると思います。

 ステップをもっともっと細かくしてあげてください。
 その子は、つらいのです。
 いいたいけどいえないのです。
 どうしていいかわからないのです。
 先生に救いを求めているのです。
 先生が助けてくれないので困っているのです。
 悲しいのです。

 できない これはつらいです。できる人にとっては何でもないことで悩んでいるのです。「えーっ、こんなことができないの」ということで悩んでいるのです。

 
 ステップを細かくしてください。
 とりあえず、1つのステップを10以上にわけてください。
 できたら100くらい。これくらい細分化すれば、その子は変わりますよ。絶対に。

 100倍細かくの例
 
 授業でほめる

 1   授業前にほめる。
 2   教科書をもってきたことをほめる。
 3   ノートをもってきたことをほめる。
 4   筆箱をもってきたことをほめる。
 5   鉛筆をもってきたことをほめる。
 6   消しゴムをもってきたことをほめる。
 7   下敷きをもってきたことをほめる。
 8   赤鉛筆をもってきたことをほめる。
 9   定規をもってきたことをほめる。
 10  チャイムが鳴ったら、教室に戻ってきたことをほめる。
 11  チャイム着席していることをほめる。
 12  指示されて教科書やノートを出したことをほめる。
 13  指示されて教科書やノートをはやく出したことをほめる。
 14  指示なしで教科書やノートを出していたことをほめる。
 15  指示されて教科書を開いたことをほめる。
 16  指示されてノートを開いたことをほめる。
 17  指示なしで教科書を開いたことをほめる。
 18  指示なしでノートを開いたことをほめる。
 19  指示されて準備できたことをほめる。
 20  指示なしで準備できたことを大いにほめる。
 21  指示を聴いていることをほめる。
 22  指示を3回で聴けたことをほめる。
 23  指示を2回で聴けたことをほめる。
 24  ふざけているのに指示を聴けたことをほめる。
 25  友だちの動きを見て、準備したことをほめる。
 26  指示を1回で聴けたことを大いにほめる。
 27  指示なしで準備できたことを、「○○君を見てごらん。すごい」というように、全体に知らせてほめる。
 28  「どこやるんだっけ」といった子を、ほめる。
 29  「今日は、○ページやる」とわかっている子を大いにほめる。
 30  今日やることはこれだ と黒板に書いてあることを見た子をほめる。
 31  今日やることがはっきりわかっている子を激賞する。
 32  復習してきた子をほめる。
 33  予習してきた子をほめる。
 34  復習してきたことをほめる。
 35  ていねいに書いてきたことをほめる。
 36  たくさんやってきたことをほめる。
 37  準備の大切さがわかっていることをほめる。
 38  やる氣ある表情をしている子をほめる。
 39  ほめられた子を見てすぐに反応した子をほめる。
 40  姿勢がいいことをほめる。
 41  両足の裏がきちんと床に着いている子をほめる。
 42  背筋をまっすぐにしている子をほめる。
 43  足をきちんと閉じている子をほめる(女の子)。
 44  口を結んでいる子をほめる。
 45  教師の方を見ている子をほめる。
 46  返事が大きい子をほめる。
 47  返事が小さい子をほめる。「恥ずかしがらずに声を出したね」
 48  「算数、いやだなー」といった子をほめる。→「いやなのにやろうとしている。すばらしい」
 49 しゃべっている子をほめる。→「みんなの集中力を試している!」
 50 騒いでいる子をほめる。→「君はエネルギーがすごい!」
 51 教師に反抗する子をほめる。→「自分の意志をはっきり表現している」
 52 「わかんないよー」といった子をほめる。
 53 「できないよー」といった子をほめる。「きちんといったのがいい」
 54 ノートに日付を書いた子をほめる。「いつやったかすぐわかるね」「後で、復習しようとしているね」
 55 ノートに、やっているところのページを書いた子をほめる。「どこをやっているか、すぐわかるね」「後で見ても、ぱっとわかるね」
 56 問題を書いた子をほめる。「頭の中でやろうとせず、書いて正確にやろうとしている」
 57 問題を書かない子をほめる。「先生を頼りにしてくれているね」
 58 答えを書いた子をほめる。
 59 答えを書かない子をほめる。「不正確なことは書かない、きちんとやろうとしているね」
 60 補助計算を書いた子をほめる。「簡単なこともおろそかにしないね」
 61 補助計算を書かない子をほめる。「書かなくてもできるのがすごい」
 62 ていねいに書いている子をほめる。「字がていねいだ」
 63 字が汚い子をほめる。「これからうまくなるぞ。君には素質がある」
 64 字が雑な子をほめる。「頭の中はていねいだ」
 65 題名を書いたことをほめる。
 66 指示で音読した子をほめる。
 67 スラスラ読んでいる子をほめる。
 68 たどたどしい読みをしている子をほめる。「これからうまくなるぞ」
 69 はやく読んだ子をほめる。「もう1回読もうとしているね」
 70 ゆっくり読んだ子をほめる。「じっくりていねいに読んだね」
 71 声が大きい子をほめる。
 72 声が小さい子をほめる。「声を出そうと努力しているね」
 73 口を大きく開けて読んでいる子をほめる。
 74 口を開けていない子をほめる。「もう少し口を開けたら、うますぎちゃう」
 75 表情がいい子をほめる。「女優さんみたいだ。デビュー前にサインしてよ」
 76 無表情な子をほめる。「よくそれだけ声だけで表現できるね」
 77 教科書から目を離して読んでいる子をほめる。
 78 教科書を見っぱなしの子をほめる。「正確に読もうとしているね」
 79 最後まで読んだ子をほめる。
 80 途中でイヤになってしまった子をほめる。「よくここまでがんばったね」
 81 指示されて、ノートに考えを書いた子をほめる。
 82 かけない子をほめる。「考えすぎるくらい考えてかけなくなったんだね」
 83 1つ書いた子をほめる。「まずは、1つ書くことが大切だってわかっている」
 84 2つ書いた子をほめる。「1つ書いて満足しない。向上心がある」
 85 3つ書いた子をほめる。「2つでも満足しない。やる氣がある」
 86 4つ書いた子をほめる。「すごい、追究しようとしている」
 87 5つ書いた子をほめる。「すごい、10書こうとしている。目標を決め
    て書いているのがすばらしい」
 88 発言した子をほめる。「勇氣をだして、恥ずかしがる自分に勝ったね」
 89 発言しない子をほめる。「発言しようかするのよそうか、心の中で戦っいる」
 90 何度も発言した子をほめる。「自分の手で授業をつくろうとしている」
 91 1回も発言しない子をほめる。「よく聴いていたね」
 92 「ぼくも」と「も」を使った子をほめる。
 93 人の真似をした子をほめる。「いいところはすぐに真似する、その行動    力がすごい」
 94 オリジナルな意見を述べた子をほめる。「人と違う視点からものを見ることができる」
 95 友だちの発言をしゃべって聴いている子をほめる。「同時に2つのこと
    ができる。聖徳太子並だ」
 96 友だちの発言を聴いている子をほめる。「君は何が大切かわかっている」
 97 友だちの発言をうなずいて聴いている子をほめる。「反応しているね。
    聴いていることが話し手に伝わるね」
 98 話し手の目を見て聴いている子をほめる。「そんな目で見られたら、す
    ごく話しやすい。話してよかったと思うよ」
 99 真剣に聴いている子をほめる。「君は一生の財産を手に入れたね」
100 友だちの発言を聴いて、それを受けて発言した子をほめる。「聴くだけ
    でなく、それを活かして考えたね。しかも、それをみんなに伝えたね」




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